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IT化の時代に求められる人材スキル

IT化の進展による働き方の変化と、そこに求められる、人材のあり方について語り合う



今回の[情報教育インタビュー]では、これまでの"教育の現場(=教育機関)"から視点を変え、「IT化の時代に求められる人材スキル」をテーマに"ビジネスの現場"の方にご登場いただきました。
ご協力いただいたのは、IT関連を基軸とした人材派遣企業の株式会社アネスト。派遣就業者の広がりの背景から、今の企業が必要としている人材の要件に至るまで、IT化の進展と照らし合わせた人材のあり方を幅広く語り合いました。


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人材派遣業界の現状について

人材派遣と働き方の変化

IT-EI 今、派遣というスタイルで働く社会的なニーズは広がりつつある※1ようです。そこには、社会情勢や個人の価値観の変化などといった時代背景が起因していると思いますが、日本で人材派遣業がスタートした1980年代※2と比べると、求めるほうも求められるほうも、さまざまに変化しているような気がします。そこでまずは、今の人材派遣業界で起こっている現状について簡単にお聞かせください。

宮田 一昔前の人材派遣というのは、"忙しいときに・便利に・短期的に雇用する"といった利用が主流を占めていましたから、そこでは、正社員に代わるような能力の起用という見方はされていなかったと思います。しかし、最近は逆ですね。"社員でそういう人が採れないので、派遣会社にお願いしたい"という声も多くなってきています。こうした傾向を、企業側の立場から考えますと、「固定費の流動化」ということが挙げられます。終身雇用が常識としてあった時代は、5年、10年と社員を教育して、その後15年から20年間をかけて存分に働いてもらえれば良かったわけですが、今はそうした働き方を企業側も期待していません。そこで、"最初から仕事のできる人を採用しよう"という流れが生まれ、そこにマッチしたのが人材派遣なんだと思います。
 一方、個人の立場から見ますと、今、世間には『フリーター』※3と称されている人がいますが、この言葉が造語としてつくられた当時は、特定の企業や組織に属さずに個人の能力一本で生きている人たちのことを意味していたそうです。
 今は、そのような特殊な世界で起きていたことが、もう少し広がって、100人いる企業の中で10本の指に入れる人ならば、"組織に所属しなくても十分やっていける"といったステージが、派遣という働き方として用意されつつあるように思います。もちろん派遣就業者の中でも、極めてハイスペックな人というのは、チャンスを手にして自分自身でステージをつくっていきますから、極端な話、そういう人には人材派遣会社は不要になるのかもしれません。しかし、それは一握りの人でしょうし、そのような特殊な人は別にして、能力はあってもステージに上がるための術(すべ)を持っていない人たち、あるいはその術として人材派遣会社を上手に利用していきたいと考える人たちが出てきているんです。それは、自分の働きたい分野と発揮できる能力を条件として派遣会社に登録しておいて、"派遣会社の顧客先に、どうぞ私をうまく売り込んでください"というような、職に入るための一つの手段としての活用なんですね。
 今は、こうした企業側と個人の双方のニーズが相俟って、派遣業界全体の気運が盛り上がっているといった構図になっているんだと思います。

IT-EI 派遣という働き方の仕組みを、個人が戦略的に活用するという傾向が浮上してきたのは、最近のことですか。

宮田 こうした働き方の萌芽は、実は7〜8年前ぐらいからあって、このことは外資系企業が早かったですね。外資系では、派遣社員といえども、日本企業のように"これだけやってくれればOK"ということではなくて、ミーティングにも参加させられますし、その席で自分の意見を求められることも普通です。そうなると、「あ、今までと違うんだ」ということに派遣スタッフ側も気づきますし、そこから意識が変わっていったんですね。逆輸入ではありませんが、そういう方々が日本企業に入り、そこに理解ある上司がいれば日本企業でも同様の働き方が成り立ちます。そうした、個の役割や価値が評価されるスタイルが浸透していって、結果的に今日のパイが広がってきているんだと思いますね。

IT-EI そうした働き方が広がっていくことで、例えば、"必要な人材を集めて、終われば解散!"といった、ハリウッド映画のようなスタイルが日本でも確立すると思いますか。

宮田 ハリウッド映画型に、どこまで近づけるのかはわかりませんが、"何かのプロジェクトごとに働く"といったニーズは、IT系や技術系の人にはあるでしょうね。例えば、やりたいプロジェクトがあったとしても、正社員の場合は人事異動などで部署が変わりますし、"スペシャルな道がなかなか持てない"ということも起こりがちです。そこで、自分のスペシャリティによってプロジェクトに参加したい人にとっては、派遣会社を使えば早いわけですよね。派遣会社はそれをなりわいとしていますから(笑)。もちろん、ご自身で探していくことも可能だと思いますが、派遣会社にいれば彼らはワン・オブ・ゼムでいいわけですよ。つまり、"自分でも探せるけど、自分で探さない手法の一つとして派遣会社を使って、良かれと思う新規の企業に行ってみよう"というスタイルです。正社員になると、異動のほかにもやらなくてはいけないことも多いですし、派遣ならば、"Aに強い人はAの道で生きていく"ということも可能です。昔は、こうした話は理想論風に聞こえましたが、今ではそういった働き方をしている人たちが実際にいますからね。

IT-EI そのような、何か特別の道を突き詰めて、その道で生きていく、といった働き方が可能となるのは、やはりIT系や技術系の分野に多いのですか。

宮田 いや、実際はそんなことはなくて、財務や経理に強い50歳代の中には、『IPO』※4のプロとして働きたいという人もいますよ。現状は、"50歳代で経理マン"といった転職はなかなか難しいのですが、『IPOに強いです』となれば、どこの企業からもニーズがあります。と言うのも、今は30歳代の社長さんが株式公開する時代です。しかし、その世代だと『IPO』に不慣れな方も多く、そうした場合に証券会社と一緒に株式公開業務を進められるプロがいれば、右腕的なポジションで活躍できますからね。

※2
『人材派遣業のスタート』・・・1986年「労働派遣法」施行。この法律は、「供給元と労働者=雇用関係、供給先と労働者=使用関係」となるケースのみを合法化するために制定されたもので、この時期の適用対象業務は専門的な13業務に限定されていた。<「労働派遣法」より要約>

※3
『フリーター』・・・1980年代の終わり頃に、アルバイト情報誌がつくったと言われている造語(語源=フリーアルバイターの略)。

※4
『IPO』・・・Initial public offeringの略。株式が株式市場で新しく売り出されること。株式新規公開、新規公開株とも言う。<金融用語辞典より>


専門性とマルチプレーヤー
IT業界とスペシャリスト

IT-EI ITや技術系などの業種や分野とは関係なく、他者にはない固有の強みをもって働くことがスペシャリストであり、そうした専門的な能力に対する企業ニーズは高まっているということなのでしょうか。

山田 今、スペシャリストを起用する傾向が高まっているのは、先ほど宮田がお話した、何年もかけて人を育てられなくなっている企業体力の問題とも関連しているんでしょうね。人件費を抑えるためにも、経験を積んだスペシャリストを即戦力として活用したいと考える企業は業種を問わずして多いですからね。とは言っても、ITやコンピュータの世界というのは、開発者をはじめとするスペシャリストが生まれやすい分野だったとは言えると思います。
 ただ、ITや技術の世界というのは、銀行系のホストコンピュータ、Webサーバーの構築、モバイル端末の開発などと、各々異なる専門的な分野が確立されていて、ホストコンピュータのスペシャリストだからといって、誰もがすぐにモバイル開発の専門家になれるわけではないんですね。ひとつの世界は深く理解していても、新しい分野には精通していない、あるいはモバイル開発の一部については熟知していても、全体の構想がつかめていないなどといったことも起こっています。最も理想的なのは、企業が求める専門的なスキルを多角的に持っているマルチプレーヤーですが、こうした人材がチラホラと出てきたのが、ようやくここ最近のことですからね。

IT-EI IT系の場合は、ひとつの分野のスペシャリストがマルチプレーヤーになるのは難しいのですか。

山田 人にもよりますが、個人の独学だけではなかなか難しい部分があるというのがITの世界なんですね。例えば、『COBOL』※5という汎用系の言語がありますが、それしかやっていなかった人は、「使い物にならない」と言われた時期がありました。そして次には、『C言語』※6『Java』※7がわからないと「新しい世界についていけない」と言われたわけです。以前は、新しいフィールドに入っていくための最初の一歩は、企業が3年間ぐらいかけて育ててきましたが、今はそれがなくなりつつあります。そこで、マルチ化するためには、高額な専門書を買って勉強するだけではなく、1日5万円もする3日間集中コースなどに通って、相当量の授業料をかけて自分で修得していったんです。このような背景もあって、全方位的なスキルを持った人が、まだまだ少ないのが現状なんだと思います。

※5
『COBOL』・・・Common Business-Oriented Languageの略。コボル(事務処理用共通プログラム言語)。<三省堂提供「EXCEED 英和辞典」より>

※6
『C言語』・・・コンピュータのプログラム言語の一つ。OSなどのシステム-プログラムを記述するために開発され、現在ではパソコンでも広く用いられる。<三省堂提供「大辞林 第二版」より>

※7
『Java』・・・プログラム言語の一つ。コンピュータの機種やOSに依存しない、ネットワークでの使用に対応したプログラムの開発が可能。<三省堂提供「デイリー新語辞典」より>

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