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情報教育の課題と今後の展望

国立教育政策研究所教育課程研究センター
研究開発部 教育課程調査官
永井克昇氏



 現在、中央教育審議会では、『学習指導要領』の改正作業が進められておりまして、10日ほど前の2007年11月7日に、中間報告にあたる「審議のまとめ」が発表されました。この中間報告を受け、文部科学省は2008年3月をめどに改定版の『学習指導要領』を改訂し、早ければ2011年度から次期の『学習指導要領』を実施することを考えています。もちろん中間報告ですから、内容が確定したわけではありませんが、情報教育に関しては、現在の考え方や内容をほぼ踏襲する方向で審議が進んでいます。

 そもそも、現在の『学習指導要領』が何を目指しているのかと申しますと、情報教育の分野に関しては、「子供たちに“情報活用能力”を身に付けさせる」ことになります。この情報活用能力について、『学習指導要領』のなかでは、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」という3つの柱によって定義付けています。それでは、情報活用能力を身に付けることがなぜ必要なのかということになるわけですが、それは、高度な情報社会がすでに“当たり前”のものとして目の前に存在しているからです。初等中等教育を修了した子供たちがどのような進路を選択したとしても、その先には高度に情報化された社会が待っています。だからこそ、子供たちは適切に情報を活用する能力を身に付けなければなりません。従って、高等学校を卒業するまでに情報を適切に活用するための基礎的な能力や態度を身に付けさせることが、現在の学校教育に求められているのです。

 基本的には、次期の『学習指導要領』もこの考え方に沿っているのですが、「審議のまとめ」をみますと内容については改善が図られています。例えば、現在の『学習指導要領』では、小学校における情報教育について「コンピュータやインターネットに慣れ親しませること」を目標に掲げていますが、それを「コンピュータ等を積極的に活用し、情報モラル等に関わる指導の充実を図ること」と記述しています。社会の情報化がこれまで以上に急速に進展しているため、小学生の段階から積極的に情報機器等を活用していく必要があると考えているからです。また、「情報モラル」についても極めて重視しておりまして、小学校でも著作権遵守等のモラルについて徹底的に教え込んでいかなければこれからの情報化社会には対応できないと考えています。なお、現在のところ次期の『学習指導要領』で、新たな教科を設置する予定はありません。

 現在の高等学校の情報教育では普通教科「情報」と専門教科「情報」の2つの教科が設けられていますが、私はこれを情報教育の「縦・横構造」と呼んでいます。横の構造が、情報に関する知識や技能を身に付けさせる、いわば「裾野を広げる」ことを目的とした普通教科「情報」です。すべての国民が身に付けるべき、情報に関する能力や態度を担保するのが普通教科「情報」なのです。この普通教科「情報」の2単位で、子供たちに前述の3つの能力や態度を身に付け、社会に飛び立ってほしいと考えています。また、もう一方の縦の構造が専門教科「情報」で、こちらは情報に関する高度な技術者や将来のスペシャリストを育てるための教科です。このように高等学校の情報教育は、裾野を広げるための普通教科「情報」と、高度な情報技術者を育てるための専門教科「情報」という2つの構造で成り立っています。次期の『学習指導要領』につきましても、こうした2つの構造を変更する予定はありません。

 すでに当たり前となった情報社会のなかで、子供たちが自分の力を十分に発揮していくには、情報との関わりを十分に理解し、さらには情報を適切に活用していく必要があります。そのためにも、情報社会に積極的に参画していく能力や態度を育てていくことが求められますし、そのような力を身に付けさせるための具体的な方策について、現在、中央教育審議会で慎重に検討を進めています。