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成功した経営者の失敗/柳沼 博幸氏

成功したと思っていたらいつのまにか消えてしまった会社がIT関連には多いのですが、それはなぜかをロータス、ジャストシステム、マイクロソフトに在籍していた経験を通じてお話したいと思います。
ある会社は一時期成功して業界トップになりましたが、その後衰退しました。パソコンといえばPC98の時代で、ソフトメーカーはそれだけをプラットフォームにしていれば済みましたが、その後出てきたウインドウズへの移行が遅れてしまいました。そのソフト会社はマイクロソフトへの対抗意識が強すぎて、市場動向が読み切れなかったためです。自社製品への過信のあまり、社内ではエンジニアが甘やかされ、そのせいでプログラマーが育っていかなかったということもあります。
またビジネスパートナーとしての部下を育ててゆかなければならないのに、人材が育ってくると流出してしまいました。ビル・ゲイツにもスティーブ・バルマーという有力なパートナーがいたことを想い起こしてみて下さい。 もう一つの失敗はウインドウズ95 日本語版で、マイクロソフトとの技術提携を断わったことです。その理由は、自社の技術がマイクロソフトに盗まれるのではという不安、また開発スケジュールが他社に引きずられるのは困るということでした。しかしこれが大きな誤算でした。Windowsの最新情報を入手できるチャンスとビジネスチャンスの2つを失ったことになります。
さらに1年後、パソコン本体へのバンドル販売に動きます。マイクロソフトOfficeがシェアを高めてきたころであせりがあり、パソコンに組み込んでハードウェアと一緒に売れば簡単にシェアの維持が出来ると考えたのです。しかしバンドル販売には営業努力の放棄、ブランド・会社名の放棄、流通チャンネルの放棄、価格が見えなくなるなどの決定的な弊害がありました。
成功した経営者たちの最大の欠点は、成功へのプロセスで犯してきた多くの失敗を無視し、忘れていることです。また、過去の成功から抜け出せず、自分自身の能力を過信し、周囲の人材を過小評価してしまうことです。会社を起こす人とそのあと会社を発展させる人は才能が違います。社員が100人以上になると組織が縦割になり、個々の社員が見えなくなってしまうのです。大きくなった組織を円滑に運営しながら、ビジネスを拡大して行くには、起業家とは別の才能、つまり経営者としての能力が必要とされるのではないかと考えます。
「六本木ヒルズか麻布十番か」というのは語呂合わせですが、どちらを見ているかが問題となります。六本木ヒルズに住むのを夢見るのはいいのですが、商売そのものは麻布十番でやるべきではないでしょうか。 私の住む山形の過疎地は世帯数100でパソコン普及率が30%です。インターネットに対する興味は高く、民宿や学校を中心にホームページを作っているところが15、6軒ありますが、それ以上は増えません。パソコンがあってもキーボードが使えない、文章を書く習慣がない、インターネットの利用法が分からない、パソコンを使わなくても日常生活には支障が無い‥などの理由でその先へ進まないのです。民宿の経営者たちはホームページを開けば客が集まると思い込んでいますが、そこで何をどのように知らしめるかまでは考えていません。情報リテラシーの問題でしょうか。パソコン、インターネットを普及させるためには麻布十番の商店街を含めて、極々一般的な人たちの市場を掘り起こすべきではないかと思います。IT教育関係の人がいたら、是非考えてみて下さい。情報リテラシー、コミュニケーション・リテラシーを含めたインフラの整備が必要なのです。